母乳やミルクを吐き戻すのはなぜ?予防はできる?受診の目安は?【小児科医が解説】

赤ちゃんは、母乳やミルクを飲んだあとに鼻や口から吐いてしまうことがあります。赤ちゃんにはよくあることとは聞いていても、量や回数が多いと心配になりますよね。今回は、授乳後の吐き戻しの原因と、予防としてママ・パパができることを、3児のママであり小児科医の保田典子先生に解説していただきました。

赤ちゃんの吐き戻しはなぜ起こるの?

赤ちゃんの胃はとっくりのような形で、胃と食道のつなぎ目の部分の締まりが悪いため、大人と比べて逆流しやすい構造をしています。そのため、生後3ヵ月ごろまでは母乳やミルクを飲んだあと、ちょっとした刺激で吐き戻してしまうことはよくあります。また、赤ちゃんは母乳やミルクと一緒に空気も吸い込んでいます。授乳後に上手にげっぷができないと吐き戻しの原因に。満腹中枢が未発達の赤ちゃんは、母乳やミルクを飲みすぎて吐き戻してしまうこともあります。

ただ、吐き戻したあとも機嫌がよく、体重も増えているようであればあまり心配しなくて大丈夫です。また、授乳後に飲んだものを口からたらたらと流れ出ることもありますが、これは溢乳(いつにゅう)といい、生理的なものなのでこちらも問題はありません。

とはいえ、吐き戻し以外に下痢などの症状がある場合や、赤ちゃんの元気がないなどの場合は注意が必要。吐き戻しをしたときは、いつも以上に赤ちゃんの様子を気にかけてあげましょう。

量や頻度には個人差がある?吐いた量が多くても大丈夫?

赤ちゃんの背中をさすっている様子

授乳後によく吐き戻してしまう子、吐き戻す量が多い子、吐き戻しをあまりしない子など、吐き戻しの量や頻度などには個人差があります。頻繁に吐き戻す場合は、母乳の飲み過ぎや逆流などが主な原因だと考えられます。頻繁に吐き戻しをしていても、成長曲線に沿って体重が増えていれば栄養面を気にする必要はありません。体重が増えていない場合は受診をしましょう。

また、1回の吐き戻しの量が多くてもすぐに脱水にはなりません。心配だからと、吐いた直後に母乳やミルクを飲ませなくて大丈夫です。大量に吐いてしまった場合も、1回なら過度に心配しなくてよいでしょう。大量に吐き戻すのが続く場合は、受診しましょう。“大量”の目安は個人差がありますが、おしっこの量が減ってきたら注意が必要だと考えてください。

そのほか、吐き戻し以外に発熱や下痢をしている、顔色が悪い、赤ちゃんがぐったりしている、体重が増えていないなどの場合は治療が必要だと考えられます。吐き戻したものが茶色い、吐き戻したものに血液が混じっている、黄色い胆汁が混じっているなどのケースは、何かしらの病気が原因の可能性があるので、すぐに受診しましょう。

吐き戻しの基本予防策とは?

赤ちゃんは元気でも、授乳後に吐き戻しが多いとママ・パパの気持ちも落ちつかないでしょうから、(1)げっぷをしっかり出してあげ、(2)飲む量を見直して吐き戻しを予防しましょう。

・予防策1: げっぷをこまめにさせる

新生児期の赤ちゃんは自分でうまくげっぷを出せないので、大人が出してあげる必要があります。授乳後に、赤ちゃんの頭と首をしっかり支え、縦抱きをします。赤ちゃんのおしりを支えて顎が肩に乗るようにしたら、赤ちゃんの背中を丸くして、背中を上下に軽くさすってあげましょう。赤ちゃんを大人の膝に横向きに座らせ、片手で体を支えてもう片方の手で背中をさする方法でも構いません。

げっぷは、授乳の途中で出してあげてもOK。おっぱいの場合は、反対の乳房に変えるタイミング、哺乳びん授乳の場合は、半分ほど飲ませたタイミングで試してみましょう。げっぷを出すのに時間がかかる子も、途中でげっぷさせるとうまくいくこともあります。個人差があるので、赤ちゃんの様子を見ながら、げっぷのタイミングもいろいろ試してみるといいでしょう。

・予防策2: 飲む量を調整する

母乳やミルクの量を測って、飲ませる量を調節してあげるのも予防策の一つです。母乳育児の場合は飲んだ量がはっきりしないため、授乳前と後で赤ちゃんの体重を測るといいでしょう。この体重差が「赤ちゃんが飲んだ量」になります。母乳育児に限らずミルクや混合の場合も、適量かどうか不安があれば、量や回数を記録しておき、健診や新生児訪問の際に、医師や助産師さんに相談すると安心です。

赤ちゃんの体重測定

・予防策3: 飲み過ぎや、空気の飲み込み過ぎを防止する

1.おっぱいの場合
母乳の出がいい場合は、母乳の勢いがよすぎるがために、赤ちゃんが飲みにくかったり、吐き戻したりすることがあります。授乳前に乳輪をやわらかくして圧抜きするのも一つの方法。また、乳首を乳輪部まで深くくわえさせて、空気の飲み過ぎを防止することも大切です。そのためには、ママと赤ちゃんのおなかを密着させ、赤ちゃんの体はまっすぐに、ママは背筋を伸ばすなど正しい授乳姿勢をキープすること。赤ちゃんは正しくおっぱいを吸えるため、空気の飲み過ぎを防止できます。

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2.哺乳びん授乳の場合
哺乳びん授乳の場合は、赤ちゃんの頭と首を支えて上体を起こした姿勢をキープして、誤飲や空気の飲み過ぎを防ぎます。赤ちゃんの口にあった乳首の形やサイズを選び、乳首を深く含ませて空気が入らないようにします。乳首部分に空気が入らないよう、哺乳びんは45度くらいに立てて飲ませるといいでしょう。

まとめ

母乳やミルクを飲んだあとに、どうしても吐き戻してしまう子はいます。心配だとは思いますが順調に体重が増えていて元気な様子であれば、あまり神経質にならなくて大丈夫です。基本的には、赤ちゃんが欲しがるだけ母乳やミルクをあげてください。吐き戻し以外にも気になる症状があるときや、勢いよく吐くとき、体重が増えていないときは、すぐに病院を受診しましょう。

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【プロフィール】

保田典子先生

保田典子
小児科 | 高円寺こどもクリニック院長
2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。

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